「それじゃあこれが最終案でいいね」
「ああ、頼む」
思いのほか硬い声に、グラハムは瞑目した。
カタギリはその変化に気づいたようだったが、何も言わなかった。
設計図を片手に、ガラス越しのフラッグを仰ぎ見ていた。
ドッグに収まったフラッグは物言わず沈黙している。
グラハムは複雑な思いに蓋をし、気持ちを切り替えた。
「いつごろ仕上がる予定だ」
「何しろ突貫工事だからね。急いで用意をさせているけど――」
「期待している。お前に任せれば安心だ」
「……褒めても直ぐには完成しないよ」
「分かっているさ」
ため息をついたカタギリに、グラハムは肩を竦めてみせる。
さっそく技術部に連絡を取るカタギリを横に、視線はフラッグを捕らえていた。
ジンクス部隊のリーダーにと命令が下ったとき、グラハムは固辞した。
ハワードの墓標を前に誓った誓いを破るわけにはいかない。
何よりもフラッグを愛しているのだ。フラッグ乗りであることを誇りに思っている。
一度は作戦からグラハムを外すことで納得した上層部だったが、
ジンクス部隊の初陣があまり戦果を挙げられず撤退したことを受けて、
基地に残っていたジンクス一機のパイロットにと再びグラハムの名があがった。
何故わざわざジンクスを一機残していたのか分からない。
そんなことはグラハムにとってどうでもいいことだった。
「君は軍人で、僕は軍属だ。その意味が分かるね?」
「……熟知している」
不意に現実世界に戻されたグラハムは、唸るように呟いた。
カタギリの言いたいことは十分理解しているつもりだった。
ガンダム鹵獲に世界が動いたときは、圧倒的な物量作戦を展開しそれを指揮した。
あの作戦が成功していれば、後世の歴史家は各陣営の戦力差にCBを支持するかもしれない。
上層部はまずカタギリを味方に引き入れた。フラッグのチューンをしているのはカタギリである。
彼がジンクス部隊の方に配属になれば、カスタムフラッグを細かく整備する者がいなくなってしまう。
上層部はいくつか条件を付けて、再度グラハムに辞令書を手渡した。
それが今回の、擬似GNドライヴをフラッグに搭載するという形である。
――果たしてそれはフラッグと呼べるのか。
グラハムは何度となく自問自答した。答えは未だ出ていない。
ハワードに誓ったはずだ。男の誓いに訂正はないとも言った。
だが――。
「グラハム、僕はこう思うんだ。それでもあのときの君の思いは、本物なんだって」
顔を上げた先に真摯な瞳のカタギリがいる。
背後にはフラッグが見えた。共に戦ってきた愛機である。
様々な感情を全部受け止めるように、カタギリが微笑んだ。
「……詭弁だって、君は笑うかい?」
「いや、」
グラハムはゆっくりと瞳を瞬かせた。思いは、届くのだろうか。
完全に思考が切り替わったと知る。迷いは既にない。
そんな様子もカタギリには伝わったようで、付き合いが長いことの難点でもある。
すまないではなくありがとうと。視線に込めて二人はドッグへと降りていった。
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22話ビリグラ派生ネタ。ヤドカリをフラッグたんに付けてるの見て;
自分の中で脳内補完。果たして残り少ない話数で解明されるのか?